【2002年10月】ベトナムの民話ー月の話/フーンさんのニッポン日記⑤鳥取への旅
春さんのひとりごと
<ところ変われば・・・>
日本は本格的な秋になった頃でしょうが、こちらは毎日相変わらず暑いです。こちらサイゴンは一年中暑い季節でなのですが、季節の行事には、四季の変化を感じさせるものを取り入れています。
先月は中秋の月を愛でる日(旧暦で8月15日、太陽暦だと今年は9月21日)が年中行事のひとつとしてあり、その時は街中では月餅を売るための店が、ケバケバシイ看板を掲げて数多く出ています。こういうのは、やはり中国の影響が強く影響していますね。中国の周辺にあった国は、日本も含めてこういう風情のある行事を取りいれて来たのが今も残っています。
しかし日本では、お月さんにはウサギさんが住んでいて、キネで餅を搗いていると習いましたが、ベトナムの民話は違います。曰く
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昔々、ある田舎にCuoi(クーイ)おじさんというお百姓さんがいました。この人は嘘つきで、欲深く、人をだましてばかりいるので、みんなから嫌われていました。
ある日このCuoiおじさんが夕方、野良仕事から帰る時、一人のお爺さんが道端に倒れているのに出会いました。そのお爺さんは白い着物を着て、白いひげを生やして、長い杖を持っていました。
Cuoiおじさんが「お爺さん、大丈夫かい?」と声を掛けると、そのお爺さんは、「ああ、でもお腹が空いて動けないんだよ。何か食べ物をくれないか」と頼みました。
Cuoiおじさんは「昼に食べた餅の残りがあるけど、タダではだめだ」と、すぐにはあげません。お爺さんはお腹が空いてたまらないらしく、「お金は無いけど、それよりもっと良いものを上げるから、その餅をわしにくれないかい」と言うと、Cuoiおじさんは(お金より良いものとは一体何だろう・・・)とワクワクして、すぐお爺さんにその食べかけの餅を上げました。
その餅を食べたお爺さんは「有り難う。少しは元気になったわい」とお礼を言いました。Cuoiおじさんは早く、そのお金より良いものが欲しくて、「爺さん!早くそのお金より良いものを呉れよ!」と催促すると、お爺さんは自分が手にしていた杖を差し出し、「これがそうだよ」と手に取らせました。
Cuoiおじさんはそれを聞くと「何だ!こんな汚い杖がお金より良いものだと!」とカンカンに怒りました。お爺さんはそれを聞くと、笑って「まあまあ、そんなに怒るらんでいい。実はこの杖はお金の成る木でな、Da(ダー)の木と言うんじゃ(ガジュマルの木のこと)。家に帰ったらこれを地面に挿して、毎日キレイな水をかけなさい。そして大きくなるとお金がなるよ。但しくれぐれも汚い水や、オシッコなどをかけてはダメだよ。実はわしはこの山に住んでいる仙人なのさ」と言って消えていきました。
家にその杖を持ち帰ったCuoiおじさんは、さっそく自分の庭に植えてキレイな水をかけました。欲深いCuoiおじさんは自分の奥さんにも、この木がいずれ金の成る木だとは言わずに、自分一人の胸にしまって黙っていました。
しばらく経つと確かにその杖からは新しい芽が出て、葉になりみるみるうちに大きくなってきました。それを見てCuoiおじさんは「あの爺さんの言ったのは本当の事かもしれない」とホクホクしてきました。
そしてある日、Cuoiおじさんはいつものように野良仕事に畑に出ている時に、家にいた奥さんがどうしてもオシッコがしたくてたまらずに、「どうせなら、先日旦那が植えたあの木の根っ子にしたがいいだろう」と、事情を知らない奥さんはそこに走って駆けて行きました。
すると木の根が大地から抜け始め、今にも空に飛んで行きそうな感じです。たまたまその時Cuoiおじさんが帰り、「何と言うことをしたんだ!」と怒りましたが、もうその時には地面から根っ子がすべて抜けてしまいまいした。
Cuoiおじさんは、「ちくしょう!お金の成る木を逃してなるものか」と、その枝に飛び付き、押さえつけようとしましたが、木はそのままお月さまに飛んで行き、Cuoiおじさんは地球に帰りたくても帰れず、今もそのまま木にぶら下ったままです。
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*ベトナムではお月さまに見える模様は、ウサギさんではなく、Daの木とそれにぶら下がっているおじさんだということです。
(教訓)欲深い人間は、Cuoiおじさんのようにずっと一人ぽっちになるよ、と言うお話! デシタ。
フーンさんのニッポン日記⑤
フーンさん鳥取へ行く
<2002年3月9日(土)>鳥取に行く
■ 大きいカニにビックリ!■
今日は春さんの友達で、鳥取にいるFさんに会いに行くというので京都駅から電車に乗った。Fさんは、私たちがベトナムで結婚式を挙げた時にも来てくれたので大変懐かしい。鳥取駅に着くとFさんが迎えに来てくれていた。ちょうどお昼なので食事に行く。
着いたそこは、家族連れの人たちが多いファミリーレストランだった。私は鳥取に着くまでの電車の中で車酔いしたのであまり食欲が無く、ここではスープだけを頼んだ。出て来たスープには髪の毛が入っていた。Fさんがそれを見て「取換えよう」と言ったけど、これくらいはたいしたことではないので「いいです。ゼンゼン問題有りません」と言って、そのまま飲んだ。スープを飲んだら少し気分が良くなって来た。
お昼を食べた後、砂丘を見に行くという。20分ほどして着いた所は海が近くに見えて、小さい砂漠のような場所。ベトナムのムイネーという場所に似ている。ムイネ-では砂丘の中にある坂になったところでみんなビニールを尻に敷いて滑っているけど、ここではみんなただ歩いているだけ。しかも歩いていると、靴の中に砂が入ってくるので歩きにくい。そこには30分ほどいて、さらにこれからヨナゴという所まで車で行くという。車で行く途中には海が見えてベトナムを思い出した。でもこちらの海がきれいだ。ヨナゴに行くまでは、私はほとんど後ろの席で眠っていた。そのほうが車酔いしないので楽。
ヨナゴでは、海がすぐそばにある旅館に泊まった。ここには温泉があって夕食の前に入りに行った。女湯と男湯が分かれていたので、私は女湯に入った。何人か先に入っていた。こういう体験は初めてなので恥ずかしかったが、温泉は大変温かくて気持ちが良かった。
この旅館で夕食に食べたカニは、手足も長くて、大きくて、美味しくて、何という名前か知らないけど、今までこんなカニは食べたことがない。ベトナムのカニも美味しいけど、ここのはそれ以上に美味しかった。
<2002年3月10日(日)>
朝、食事の前に外に散歩に出かけた。この旅館にあるユカタが無料で借りて着られるというので私が自分で赤い色のユカタを選んで着て外に出て歩く。ユカタは初めて着たけれど似合うかな?海のそばまで行ったけど、やはりまだ寒い。すぐ帰って食事をして、出る準備をする。
ここから春さんの家まで車10時間くらいもかかるそうだって…
いよいよ春さんの田舎へ…次号をお楽しみに